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女子野球界屈指の好打者・川端友紀。独自の調整法とW杯6連覇を振り返る。

右足でリズミカルなステップを刻んでタイミングを取り、右へ左へ広角に打ち分けて華麗にヒットを量産するー。 女子プロ野球選手1期生としてこれまでMVP1回、首位打者3回を獲得し、日本代表としても4度のW杯に出場した女子野球界屈指の“バットウーマン”川端友紀選手。その姿に2015年セ・リーグ首位打者の兄・ヤクルトの川端慎吾選手を重ねる人も少なくない。 そんな彼女もベテランと呼ばれる立場になり、所属する埼玉アストライアでも、先日W杯6連覇を果たした日本代表でもチーム最年長になった。 今回はプレーにおける調整方法から長年の活躍を支える道具、そして日本代表としての戦いについて振り返ってもらった。

Icon 19441337 1436670123094269 1330815580 n 森 大樹 | 2018/10/31

野球の基礎は父と兄から。実践を意識した練習と“瞑想”。  


野球指導者の父を持つ川端友紀選手は兄・慎吾選手の影響もあって、小学3年生から野球を始めた。体は小さかったものの足は速く、父のアドバイスで右利きながら野球を始めた当初から左打である。
野球における基礎は父と兄から教わったという川端選手が今も守る父の教えは“左手を返さないこと”。  

「私は左肩が下がりやすくて、首が落ちる癖があったのでこれはずっと言われていました。調子が良くなるほど左手の力が強くなりすぎたりとか、開きやすくなったりするので少しバッティングがおかしくなってきたと思ったらそこを意識するようにしています。」  

女子プロ野球選手として活躍した過去8シーズンのうち、打率3割を下回ったのは2014年だけ。コンスタントに数字を残し続けてきた川端選手のバッティング練習の秘訣は常に実践を想定するところにある。  

「素振りをする時はピッチャーを意識してするようにしています。打つポイントだけを意識して振っているだけでは本番で役に立たないので、一球ごとに投手の姿をイメージして、投球動作からリリースされたボールの軌道を見ながら振るようにしています。
フォームの確認をしたい時には鏡の前で振ることもありますね。 もちろん体に覚えこませるために早振りすることもありますが、基本的には一振りを大切にして振っています。よりリアルなシチュエーションを作るため、打席から見えるスタンドの様子までイメージします。
体の開きが早いなと思った日はバットを内から出して、全てレフト前ヒットを狙うように練習し、バットが体から離れないようなスイングに整えます。あとは真横からトスを投げてもらって打ったりもします。私の場合、調子が悪くなる時にはバットが外から出てくるか、体の開きが早くなるので、それを修正するための練習です。
でも調子の悪さは少しずつ変わっていったりするものなので、気づかないこともあります。そういう時はこまめに動画を撮って確認します。」    

一方で守備面に関しては素早く足を動かすことを意識しているという。足が細く動かない時は打球に対しての一歩目が遅れたり、バウンドにタイミングが合わせられず、エラーなどのミスに直結してしまう。
それを防ぐためにラダートレーニング(置いたハシゴの間を走るトレーニング)やノックを受ける際に小刻みなステップを踏んだりする。
ちなみに精神的に集中できない時には真っ暗な部屋を探して瞑想をするという。

「球場とかで暗い場所を探すのは実は結構大変なんですよ(笑)そういう時は人がいないブルペンに行ったりします」と意外なところでの苦労もあるようだ。
集中力を高めることとしてもう一つやっているのがスマホアプリの漢字間違い探しゲーム。同じ漢字が並んでいる中に1つだけある違う文字を探すというもので、脳を活性化し、目を慣らすトレーニングの一環として行っている。    

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6連覇を達成した日本代表の中で川端友紀が果たした役割。  


今年の8月22日から31日までアメリカ・フロリダで行われた第8回女子野球W杯。大会は現在2年おきに開催されており、日本は今大会で6連覇を達成し、世界の舞台で圧倒的な強さを見せている。川端選手はチーム最年長で今回で4度目の出場。全試合で4番に座り、優勝に大きく貢献した。
今大会はチームの顔ぶれも大きく変わり、海外での試合を初めて経験する選手も多かった。その中で川端選手は大会前からあらゆることを想定し、準備することの大切さをW杯経験者としてチームメイトに説いてきた。
日本とは大きく異なる文化の中での戦いで勝つためには、食事や時差などの生活面の違いにいち早く順応し、コンディションを整える必要になってくる。過去の大会では強豪国として思わぬ“洗礼”を浴びたこともあった。

「カナダで大会が行われた時、私たちの宿舎は9階だったんですけど、エレベーターが使えなくなっていて(笑)仕方ないので階段で重い荷物を持って部屋まで行きました。アメリカや他のチームはもっと下の階に泊まっていたんですけどね。 もちろんたまたまかもしれないんですけど!(笑)
そういうこともあるかもしれないというのは心構えとして持っておかなければ、本番で思うようなプレーができない原因に繋がってしまいかねないという話は選手間でしてきました。」  

加えて今回のW杯では特に若い選手とのコミュニケーションをスムーズに行える雰囲気づくりをしたいとも語っており、実際にそれを実行したことが6連覇を達成できた要因の1つでもある。

「今回は若い選手が多くて、最初はみんな固くなって緊張してしまう場面もあったんですけど、どうやったら自分の力をしっかり出せるかをミーティングで話していきました。その結果、戦いを重ねる毎に若い選手の頑張りが目立つようになっていって、それが日本の勝利に繋がったように思います。
チームをまとめるという部分についてはキャプテンの出口選手と元々アストライアで一緒だったのでやりやすくて、私は彼女のサポート役という感じでした。」  

短期間でチームとしてのまとまりを生み出し、見事6連覇という偉業を達成した一方で今大会は世界の女子野球のレベルが着実に上がってきていることを実感する機会ともなった。
特にオープニングラウンド第3戦・vsカナダは2-1、スーパーラウンド第2戦・vs台湾も2-1と接戦となっており、いずれの試合も安打数では相手が上回っている。


「世界のレベルが上がっていて、実際ナックルを投げたり、内角を厳しく攻めてくる選手もいたので簡単には打たせてもらえないと思っていました。当然初対戦のピッチャーばかりですしね。
特に決勝で対戦した台湾の先発ピッチャーはコントロールも良くて、少しシュートする真っ直ぐなんかもあって打ちにくかったです。 今回も優勝できて当然嬉しいんですけど、そういう感情よりもホッとしたというのが正直なところです。」


【続く】