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英雄たちが愛した歴史的スパイクVOL.15 『コパムンディアルの歴史編』

コパムンディアル(コパムン)はアディダスが誇る名品固定式スパイクであることはご存じだと思います。コパムンは現在も生産されており、FC東京の前田選手もご愛用です(http://king-gear.com/articles/155)。巻頭写真は手袋までして、とても大事そうにコパムンを扱っています。どなたか有名選手の実使用品なのでしょうか?

Icon 29634314 1815368455432881 1085668874 o 小西博昭 | 2018/07/11
(スパイクブログ始めました。https://maradonaboots.com/この度の豪雨災害において被害にあわれた方々にお見舞い申し上げます。 

私は西ドイツ製のモデルを中心に昔のスパイクに興味があるのですが、取替え式に比べて固定式は非常に入手しにくいと感じます。それはソールが劣化してしまい、ひび割れしたり、バラバラに崩壊するため、捨てられてしまった可能性が高いからだと思います。コパムンも例外ではなく、最近では西ドイツ時代の物はなかなか見つかりませんし、あってもまともな物は少ないようです。

巻頭写真はアディダスアーカイブから引用しましたが、アディダス社にとっても、きれいな状態の昔のコパムンは貴重なのでしょう。とは言うものの、昔と現行品の外見上の違いは微々たるもので、強いて挙げれば、かかとの革の形状とマーク類程度です。

図1はその比較になりますが、他の違いとして、昔のモデルはソール先端の補強金具がなかったようです。 

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図1
 80年代(上)と現在(下)のコパムンの比較。現在もコパムンとワールドカップはドイツで生産されています(98年頃はインドネシア製もあったようです)。

 
コパムンの特徴である黒スタッドの2色ソールは2マテリアルソールと呼ばれ、単色の固定式はアディパンソールという名称でした。コパムンのシュータンや、かかとマークの変遷は4話でご紹介した「取替え式3マテリアルソールのワールドカップ」(以下ワールドカップ)に類似し、図1上のモデルはおそらく80年代半ば以降に生産されたと思われます。

図2はアディダスアーカイブや当時のカタログなどからの西ドイツ時代のコパムン仕様変遷です。82年デビュー時はシュータンのタグが青地で、かかとマークはトレフォイル+adidas文字入りです(左上及び図3上)。

その後、シュータンタグが黒地に白のトレフォイルになったようで、ワールドカップ82のアッパーと同じパターンです(左下)。

さらに、図1上(シュータン黒地で赤トレフォイルマーク)の他に、図2右上のシュータンタグが青地で、かかとのマークがトレフォイルのみの物がありました。ワールドカップでは見かけないパターンと思っていましたが、存在はするようです(右下)。
  

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図2 80年代のコパムンのシュータンタグと、かかとマークの表示パターン。左上が最も古いと思いますが、その他の登場の時系列や地域性は不明。右上はシュータンタグが青地で、かかとマークがトレフォイルのみのパターン。

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年代中盤から後期までのコパムンによく見られ、ワールドカップでは珍しいと思います。右下写真は88年EUROのトニー・アダムス選手(イングランド)の取替え式スパイクで、珍しくこのパターンでした。
  

デビューから現在まで、コパムン(固定式)のアッパーはワールドカップと同じです(図3)。コパムンという名称も言語が違うだけで、意味はワールドカップです。82年スペインW杯でデビューしたのですが、当時の西ドイツ代表選手が使っていた固定式は、意外にも少し変わったスパイクだったことはいずれ書きたいと思います。

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図3 イタリアから入手した初期型コパムン(上、右下はかかと部分)。

アッパーに痛みが見られる中古ですが、スタッドはあまり減っていません。外国の芝生のグランドで使われていたようです。モデル名はほぼ消えていますが、本来は金色文字で、いつしか銀色に変更されたようです(挿入写真)。
下は同時期のワールドカップ82
  

80年代のワールドカップは、ほぼ西ドイツ製(稀にフランス製)ですが、コパムンの場合は生産国がいくつかあったようです。

図4上はチェコ製で、図1上とほぼ同じ仕様ですが、ソールつま先のとめ具があり、モデル名は銀文字になっています。また、生産国表示がシュータンマーク裏ではなく(右上)、内部のタグに記されています(左上)。

同じような仕様で、ユーゴスラビア製もあります。こちらはシュータンマーク裏に生産国表示があります(右中) 。

図4下はポルトガル製です。この頃のコパムンで、シュータン裏のスポンジまで黒いのは珍しいと思います。アッパー、ソールは上と似ていますが、写真ではわからないと思いますが、アッパーはカンガルーではなく、カーフのようです。

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図4 80年代のチェコ製(上)とポルトガル製(下)コパムン。右はシュータンマークの裏です。
図1
上と見た目は変わりませんが、西ドイツ製の3本線は革製ですが、これらは合成皮革のようです。
  

コパと名がつくモデルは、これまで日本でも生産されてきました。おそらく最初に登場したモデルは87年頃発売されたコパシリーズだと思います(図5上)。

アッパー皮革の違いはありますが、見た目はコパムンそっくりで、ソールが1色のアディパンソールでした。その後90年代になり、ワールドカップと同じくドイツ製コパムン、日本製コパシリーズ供に、かかとの革が現行モデル同様3本線の下側まで延長されました(図5下)。

左下は90年以降に製造されたコパムンだと思いますが、表示は西ドイツ製になっています(普通はドイツ製)。

Thumb efbc96図5
 日本製コパシリーズのコパSL(カンガルー、左上)とコパSP(牛革、右上)。

本家コパムンに比べてコスパがよく、当時学生間で人気が高かったと思います。左下は90
年以降に生産されたと思われるコパムン。なぜか西ドイツ製。もしかしたらタグが余っていて、間違って付けられたかもしれません。右下は90年以降のコパSP後継版コパSPX
  

日本製コパシリーズが何種類あるのかはわかりませんが、その後、国産コパも2色ソールになりスタッドが黒くなります。図6左上はコパSPDXですが、国産の2色ソールはスタッドがコパムンのように円形ではなく、若干、楕円形になっています(左下)。

右上はコパ・リベーレで、つま先のステッチや、かかとマークなどが通常モデルと異なります。

また、90年代の製品には珍しく、かかとの革が3本線下まで伸びていません。余談ですが、黒白2色ソールのスタッドは通常12本ですが、モデルによっては13本のこともあります(右下)。1色のアディパンソールのスタッドは13本です。 

Thumb efbc97図6 黒白2色ソールになったコパSPDX(左上)。スタッドの形状が楕円です(左下)。コパ・リベーレ(右上)。

これもアッパーは牛革で、80
年代のコパムンに細部が似ています。シュータンタグの表示が金色です。
右下は90
年代のベッケンバウアーシリーズのソール。2色ソールでは珍しく、スタッドが13本あります。
  

取替え式ワールドカップと同様、90年以降に生産されたドイツ製のコパムン復刻版もあり、98年頃にコパ・アルゼンチーナ(図7左上)が、07年に発売25周年モデルが登場しました(右上)。いずれもディテールはオリジナルとよく似ています(当たり前ですが)。

14年のブラジルW杯の時にはカラフルなコパムンが登場し(左下)、現在はオール白、オール黒のモデルもあります(http://king-gear.com/articles/91)。
 

今年は12話でご紹介した18年W杯スペシャルバージョンの発売が期待されますが、できれば、学生時代に流行っていた日本製コパシリーズのような、1色ソールで、白色3本線のモデルも登場してほしいと思います。


Thumb efbc98図7 ドイツ製のコパムン復刻版、コパ・アルゼンチーナ(左上)。なぜアルゼンチンなのかは不明です。右上は発売25周年記念モデル。メンテナンス用具などが付属していました。下はコパムンの特別カラーモデル。
右下はロシア大会特別バージョン(?)。ソールは1
色のようです。
  

最後に、コパムンを履いた数多の英雄の中でも、少し変わった選手を一人ご紹介します。

84年EUROで優勝したフランスを、準決勝で最後まで苦しめたポルトガルのジョルダン選手は、右足にコパムン(固定式)、左足にはワールドカップ(取替え式)を履いていました(図8)。

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図8 84年EUROのジョルダン選手(ポルトガル)は、右足に固定式(コパムン)、左足には取替え式のスパイクを履いていました。
写真左は西ドイツ戦で、左足はワールドカップシルバー(第8話をご参照下さい)でしょうか?

写真右2
枚はフランス戦で、ラインはどちらも白ですが、ソールの種類とともに、シュータンのタグの色も違うようです。
   

さて、ロシア大会もいよいよクライマックスです。今回は残念な(意外な)結果に終わったドイツですが、次回は80年代前半の西ドイツ代表選手のスパイクについて書きたいと思います(予定変更もありますがご容赦下さい)。 


(写真は当時のサッカーマガジン、イレブン及びゲッティイメージズなどより引用)




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