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次世代のなでしこが輝けるように。元日本代表・原歩が示す、女子サッカー界の未来の在り方

かつて、なでしこジャパンのキャプテンとしてチームを牽引し、2008年の北京五輪日本代表としても活躍された原歩さん。2009年に現役を引退し、現在はセカンドキャリアとして女子サッカー「FC町田ゼルビアレディース」のコーチを務めるなど、指導者の道を歩んでいる。今回は、現在取り組んでいる活動や、指導者として見る女子サッカー界の課題などを伺った。それに加えて、4月3日に行われた、同クラブと総合人材サービスを行う「株式会社パソナ」のパートナーシップ締結式の模様もお伝えする。

Icon 1482131451808 佐藤 主祥 | 2018/04/04
ー原さんは現在、具体的にどのような活動をされているのでしょう。

:私は今、「FC町田ゼルビアレディース」のコーチとして選手を指導しています。

また、日本サッカー協会の方でやっている『JFAこころのプロジェクト』という活動に携わっています。

活動内容としては、サッカーだけに限らず、他種目のスポーツ選手の現役、OB/OGの方と共に行動し、「夢先生」として日本全国の小学校・中学校を回って授業を行なっています。子供たちに夢を持つことの素晴らしさだったり、それに対して努力することの大切を伝えているんです。

ーコーチだけではなく、スポーツを通じた社会貢献活動にも取り組んでいるんですね。ゼルビアレディースの現状はいかがですか?

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:すごくレベル高いです!これで東京都4部リーグなのかと思うと、もったいない気がしますね。

ー設立1年目で4部に昇格したということからも、チームとしてのレベルの高さが伺えます。それに、メンバーのセレクションは2017年シーズンの前に実施したばかりなんですよね?

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:そうですね。1年目なので選手集めは本当に大変だったと思います。今年も数名の選手が入れ替わったのですが、元なでしこリーガーの萩原愛海選手も加入しましたし、全体的にレベルはさらに高くなってきています。

ーその新戦力と昨年のメンバーが噛み合えば、なでしこリーグに参戦する日もそう遠くない気がしますね。では練習についてお話を伺いたいのですが、どれくらいの頻度で練習されているんですか?

:平日は、月・水・金曜日に行なっていて、練習は19時から始めます。土日は試合があるのですが、試合がない時は練習の時間に当てています。

ー選手たちは仕事が終わってから練習に来るんですよね?疲れやストレスなどで練習に影響することはありますか?

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:それはありますね。最近あったのは金曜日の練習で、なんか選手たちの顔が怖いんですよ(笑)。イライラしていて、プレーが雑なんです。なので選手に「1週間仕事して疲れ溜まってるの?」って聞いたら、「それもありますけど…」みたいな。他にもいろんなストレスもあると思うんですけど、やはり仕事の影響は大きいと思いますね。


私自身、現役時代はダブルキャリアを実践していたので、仕事とサッカー選手の両立の大変さは分かっているんです。でも、そういう厳しい環境の中でもやっていける強いメンタルを持った選手じゃないと、このクラブで生き残ることはできません。

もっと上のレベルを目指したいのではれば、この環境で常にハイクオリティーなパフォーマンスを示していくべきだと思っています。

ー原さんのように仕事とサッカーを両立することの苦しさを知っている人に教わるというのは、ゼルビアレディースの選手たちにとってはすごく大きいと思います。

:確かにそうですね。ダブルキャリアを実践するのは難しいですが、気持ちがあれば体が自然についてくる部分もあると思うので、厳しくても「やらなきゃいけないんだよ!」っていうことを伝え続けていきたいと思っています。

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パートナーシップ締結式に出席した(左から)株式会社パソナの神奈川営業部部長・金子貴幸さん、営業総本部スポーツメイト事業・菊池康平さん、取締役専務執行役員・石田正則さん、FC町田ゼルビアレディースの事務局長・守屋実さん、奥山拓也監督、原歩コーチ

原さんは自身が経験した選手時代に加え、コーチという立場から選手を見るようになって、より「働きながら選手生活を続けることの難しさ」を痛感していた。また、守屋実さん(事務局長)は選手の仕事を探すために地元の企業を1件1件回るなど仕事やキャリアの部分で課題を抱えていた。

しかしこの度、その課題を克服するべく、FC町田ゼルビアレディースは総合人材サービスの「株式会社パソナ」とパートナーシップを結び、昨日(4月3日)にその締結式が行われた。

パソナは、総合人材サービスを展開するとともに、「働きたい!」と願うすべての人がライフスタイルに合わせた働き方で、いつでも自由に好きな仕事を選択できる。そんな豊かな人生設計を描くことができるよう、キャリア構築の機会を創り、提案してきた。

実際に、「スポーツメイト」という部門もあり、競技と仕事を両立したい方をサポートする体制を整えている。

具体的な施策として、パソナから選手に仕事を紹介し、仕事とサッカーのダブルキャリアに励める選手を1人でも多く誕生させることを挙げた。

加えて、所属選手の練習と仕事の両立に関するカウンセリングの実施や、セカンドキャリアを見据えての仕事選びなどの相談も行う。

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株式会社パソナの取締役専務執行役員・石田正則さんは、ゼルビアレディースとのパートナーシップについて、「選手のキャリア支援はもちろんですが、クラブチーム自体を盛り上げる手伝いもしていきたい」とコメント。

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FC町田ゼルビア代表・守屋実さんは「アメリカの女子サッカー選手は約120万人に対し、日本はようやく5万人を超えた程度。競技人口の少なさは改善すべき課題」としたうえで、「仕事とサッカーの両立できる環境を構築し、女子サッカー界を盛り上げる取り組みをしていきたい」と力強く語った。

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締結式に出席した原さんも「トップリーグの選手であっても、仕事との両立は切っても切れない関係です。それでも頑張っている姿を見せ、どちらも力を発揮できるような環境を整えてあげること。それが経験者である私たちがやるべきことだと思います。それによって選手のレベル上げであったり、意識改革をすることに繋がり、より魅力的なチームに成長できるはずです」と、今後の女子サッカーチームとしての在り方を力説した。

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最後に、石田さんと守屋さんがサインを書いたサッカーボールを交換。お互いパートナーとして協力し合い、女子サッカー界の発展のために尽力していく姿勢を改めて示した。

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この協定は、「働きながら競技を続ける事のできる環境整備」のモデルケースになっていくだろう。

女子サッカーだけではなく、全スポーツ界の未来を示す道しるべとして。

<インタビュー第2回はこちら>
<インタビュー第3回はこちら>
<インタビュー第4回はこちら>

<取材協力>

◆FC町田ゼルビアレディース

◆株式会社パソナ