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レッドブル・エアレース世界王者『室屋義秀』がこだわり続ける世界一

2017年10月15日、1人の日本人スポーツ選手が飛行機のF1と言われるレッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップで偉業を成し遂げた。彼の名は、室屋義秀(44歳)。2009年にアジア人初のレッドブル・エアレース・パイロットに抜擢され、2016年の千葉大会で念願の初優勝を果たし、2017年シーズンでは8戦中4勝もし、アジア人として初となる年間世界王者に輝いた。そこで今回、室屋氏に単独インタビューを試みた。

Icon aff20898 d2d2 431d 8b05 0f3c5e5ae91b 佐久間秀実 | 2017/11/17
Thumb 1 (Joerg Mitter/Red Bull Content Pool)

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(Samo Vidic/Red Bull Content Pool)

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(Samo Vidic/Red Bull Content Pool)

Thumb 4 (Joerg Mitter/Red Bull Content Pool)

Thumb 2 (Joerg Mitter/Red Bull Content Pool)

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(Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool)

Thumb 3 (Joerg Mitter/Red Bull Content Pool)


2017
年10月15日、レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ最終戦(インディアナポリス大会)で年間ランキング2位に付けていたが、最後のフライトで奇跡的なタイムを打ち出し、年間総合チャンピオンに登り詰めると、瞬く間に日本中に室屋氏の名が知れ渡った。

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凱旋帰国翌日となる10月19日に、都内で開催された記者会見で室屋氏から発せられた言葉で印象的だったのが、「
優勝とは関係なしに技術を追い続けていきたい」ということで、以下のようにも述べていた。

室屋:総合優勝は今年の目標なんですけど、自分としては“操縦技術世界一”ということを昔から掲げていて、今回も予選が乱れたり、いろいろあるわけです。ワールドチャンピオンにポール・ボノム選手(2003年~2015年のシーズンで活躍)の名前が3回あります。絶対王者で、彼の技術というのは秀でていて、追いついていないというのは自分でも分かりますので、技術はまだまだ追いたいと思っています。追っていけば、もう1回チャンピオンということもあるでしょうけど、優勝とは関係なしに技術を追い続けていきたいなと思います。

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(Chris Tedesco/Red Bull Content Pool

結構奇跡的な勝ちもあったり、運不運もあり、そういうのも含めて1年間チームを強い状態で進めていくことができないと総合優勝はできませんので、速くなったから来年総合優勝できるかというと、それはまた違うと思います。課題かなと思います。技術的には積み重ねていけばどんどん上手くなっていきますから、そこについては妥協なくやっていきたいと思います。


10月21日、ふくしまスカイパークで室屋義秀氏に現在の心境をうかがってみた。

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――年間総合優勝おめでとうございます。今の心境をお聞かせいただけますか。

室屋:ありがとうございます。今までやってきたことが形になっただけですね。この先やることも前から決めているし、何も変わらないです。ただ、日本に帰ってくると周りの反応が違うので、凄いなという感じです。10月19日の記者発表も満席でしたし、凄い反響ですよね。  

――“操縦技術世界一”を目指しているとのことですが、これまでどのようにして技術を高めてきたのでしょうか。課題はありますか。  

室屋:技術は訓練次第で、1つ1つ練習していくしかないですね。操縦中は心拍数が160〜180位までに上がっていますから、それに耐えうるためのトレーニングを日頃から行っています。日々、身体作りをしつつ、技術も高めるっていう感じです。ビジョントレーニングやイメージトレーニングもしていますけど、まずは基礎トレーニングですよね。全ての生活がレースに向けてのものとなります。特別なことはしないで、ペースを保つのが極めて大事ですね。

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――日本にレッドブル・エアレースを根付かせるために課題に感じていることはありますか。また、活動を始めたときから裾野が広がっていると感じていますか。  

室屋:世界一は届いたけど、技術的にはもっと求めるものがあります。自分個人としての追求は続けます。今注目を浴びて、やりたいと言う子供や大人もいるんですけど、どうアドバイスすればいいか分からないので、そこのステップアップも作っていきたいと思っています。自分と同じことをやって、自分と同じようになるとは思わないですから。

――福島の地に、こだわる理由を教えていただけますか。  

室屋
:鳴かず飛ばずの時から、ここ(ふくしまスカイパーク)をベースにトレーニングしてきました。受けたものを返すという思いがあるだけですね。ただ、2011年は震災や原発事故もあり、個人的にも大会でボロボロで凹み切っていましたが、使命的に強くなり福島と一緒にリカバリーしてきたという思いもあります。一緒に歩んできたというバイオリズムの波に乗せてもらっているところがあるかもしれません。

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(Chris Tedesco/Red Bull Content Pool)

――物
凄い飛行をされますね。空を飛ぶことへの恐怖はありますか。  

室屋:恐怖心はあっていいですよね。ないと、いくとこまでいって怪我したり取り返しがつかなくなりますから。体のブレーキや
痛みも含めて人間の本能であると思います。  

少しずつ訓練でその領域を広げていきます。どこまで余裕でいることができて、自分を制御しながら限界は超えないということも大事ですね。

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室屋氏が子供の頃に描いた「大空を自由に飛びたい」という想いから、空に向けての挑戦が始まり、そして、いつしかその想いは、“操縦技術世界一”という夢へと変わる。

夢に向かって25年間にも渡り純粋に追求し続けた結果、2017年シーズンでは、計4回の優勝を含む悲願のワールドチャンピオンを獲得することができた。

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(Andreas Langreiter/Red Bull Content Pool

レッドブル・エアレース参加選手の平均年齢は40代となり、44歳の室屋氏は決して珍しい存在ではない。しかし、日本のスポーツ界全体を見渡すと、年齢の高い現役世界王者が誕生したということになる。

“操縦技術世界一”の夢を叶えようと、室屋義秀の挑戦は、これからも続く。

本当の戦いは、始まったばかりなのかもしれない。  (了)


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Thumb 5(Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool)


室屋義秀

http://www.yoshi-muroya.jp/


レッドブル・エアレース
http://airrace.redbull.com

ブライトリング・ジャパン
http://www.breitling.co.jp/


取材協力/レッドブル・ジャパン ブライトリング・ジャパン

会見・取材写真/佐久間秀実