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日本人初!プロのホぺイロになった松浦紀典が語る物への矜持 Vol.6「本田圭佑選手のこだわり」

日本人初のプロのホぺイロとして東京ヴェルディや名古屋グランパスなどで25年に渡り活躍してきた松浦紀典さん。物への矜持や印象に残っている選手のこだわりなどについて約8時間に渡り聞いてきました。Vol6.では本田圭佑選手との出会いや知られざるこだわりについて聞きました。

Icon 16466945 810048175800857 1247399717 n 菊池 康平 | 2017/07/11
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――本田圭佑選手が練習生の時から一緒ということですが、初対面の印象はどうだったんですか?  

松浦:初めての出会いはグランパスのキャンプの時に現在、鳥栖にいる豊田陽平選手が3年で本田選手が2年で、練習生という形で来ました。  

星稜高校のグランドが人工芝だから、足腰に負担がかかるので、ちょっと足が心配だから「まっちゃん、ちょっと足元の面倒見てあげてよ」っていう事でスカウトの方から紹介してもらいました。当時の人工芝は今と違って足に負担がかかってましたからね。  

――当時から本田選手はしっかりしていたんですか?  

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松浦:そうですね、当時から自分を持っていましたね。グランパスの寮で本田選手とお茶を飲みながら話したことをよく覚えています。  

まだ高2だったんですけど「ワールドカップで点を取りたいからまっちゃん、足元のサポートお願いします!」って言うんですよ。  

私からしたらプロにもなっていない高校生が「何言ってるんだ!」って思うわけじゃないですか。そしたら目がマジなんですよ。

これは本物だなと。「よし分かった!」って言って、そこから色々な相談も受けるようになりました。  


仮契約する時に「海外に移籍したいんだけどそのことを契約に入れた方がいいか?」とか「カズさんはどんな準備をしていましたか?」など質問攻めなんですよ。  

海外でのプレーを経験されている方って当時はそんなにいなかったじゃないですか。カズさんとか中田英寿さんとか。  

「カズさんはどうだったんですか?どういう準備していました?」とか「試合前はどうだったんですか?、移動の時はどうだったんですか?」とかもう細かく。  

「どんな物食べてましたか?」とかすごく興味があったみたいで自分も応えられる範囲で回答はしてました。  

その当時から「サッカー選手がこだわれるのはスパイクや!」っていつも言っていたんですよ。 私もそういう話はしてましたけど、ユニフォームや普段の練習着はチームで決められたものじゃないですか。  

唯一こだわれる物っていうのはスパイクなので、そこは絶対にこだわった方がいいよって話はしてました。  

ーー本田選手はずっとミズノですよね?  

松浦:そうですね、彼はずっとミズノですね。  

ーー磨き方を教えてくれとか、そういう細かい質問もありましたか?  

松浦:磨き方っていうよりは、どんなスパイクが良いとか、足のここが気になるんだけどどうしたら良いかな?とかですね。  

ーーJリーグでは固定式のスパイクしか履いていなかったそうですね?  

松浦:そうなんです。  

ーー海外ではミックスを履いてますよね?

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松浦:ミックスを履くようになりましたね。最初ミックスを履いたらフリーキックが決まらないんですよ。  

その力の抜け方や引っ掛かりとかも違うので、踏み込んだ時も芝生だと多少遊びがあるじゃないですか、ここで踏み込んでもちょっと先で止まるという。  

でもミックスだと刺さってしまうとグサッとそこで止まってしまうんですよ。そうするとその感覚に慣れてないから、その数センチ数ミリの違いで入ったり入んなかったり、バーに当たったりとかしていました。  

最初は「これ絶対に無理、俺は無理だわ」って言ってました。「でも圭佑、海外に行くんだったらミックス履かないと。

海外行ってから『どうしよう』となるよりは、今から準備しておいた方が良いよ」って言って、雨が降ったら練習が終わった後にミックスを履かせて、「フリーキック蹴ろう」って言って、誰もいないグランドで私と本田選手の2人でやってました。  


僕はボール拾い、本田選手は蹴るっていう形です。 本田選手の感覚であまりやってはないんですけど、例えば軸足はミックス、蹴る足は固定とかそういう履き方をするようになりましたね。  

ーー普通は3種類ですよね。ミックスと固定と取り替えの。本田選手の場合は4種類ですね。左右が違うというバージョンも含めて。  

松浦:そうですね。  

ーーそんな人いないですもんね。  

松浦:いないですね。  

――左足だけ固定で、軸足の右足はミックスとかあるってことですもんね!  

松浦
:そうなんですよ!すごいですよね。  

ーーミランでもそういう感じだったんですか?  

松浦:ミランはそうですね、よっぽどじゃないとそこまでしていないんですけど、オランダのフェンロに行った時に、田んぼでサッカーをやっているみたいで「どうしよう」って言うから最悪は取替式だよ!って。

  「でも重たいんだよね」って。「でも滑って得点チャンス逃したら元も子もないから取り替え式を履いた方がいいよ」ってメッセージを送ると「わかりました!」って言ってました。  

当時ちょうどモデルチェンジで左右違うスパイク履いてるんですよ。  

プレーしている写真を見たら「あれ~!?」ちょっと違うぞって思って、連絡したら右が取替で左がミックスのスパイクを履いてました。  

軸足の右足を取替でしっかり刺さるようにしていて驚きました。  


ーー左右対象の色のスパイクがはやったことはありましたが、本当の意味で左右異なるポイントのスパイクを履いていたんですね。  

松浦 左右の種類が違うスパイクで2010年ワールドカップのカメルーン戦はその履き方でゴールしたんですよ。  

ーー出会った時の高校二年生の本田選手の「ワールドカップで点をとりたい」という言葉が形になった瞬間ですよね。  

松浦:本当にあの瞬間は嬉しかったです!  

ーー今でもイタリアの本田選手へスパイクを送り続けているんですか?  

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松浦:ミズノの工場に本田選手のラスト(足型)があるんです。本田選手の足型に合わせてスパイクを作ってもらっているので、今は私が手を加えなくても大丈夫なんです。  
以前は革を伸ばしたりして送ってました。


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これは本田選手のスパイクなんですけど、代表戦で使ったものです。  


アジア最終予選のアウェイのUAE戦とホームのタイ戦で使ったものなんですけど、代表で使ったものは僕の手元に来てケアして飾ってます。  

だから細かい調整はしなくてもいいんですけど、やはりモデルチェンジした時とかはどこかに当たったりする時もあるので、ちょっと親指だけ伸ばしてほしいとか、微調整みたいな事はたまにはやります。


vol.7に続く。


取材協力/株式会社ミズノ