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『中西哲生x古田敦也』ALE14 #2取材レポート!0.1秒短縮できたら1億円!?~”フルタ式”良い指導者になるには?~

2017年2月27日、『ALE14 #2』が開催され、元ヤクルトスワローズ監督・古田敦也氏によるプレゼンテーションが実施された。WBC開催を直前に控え、古田氏が今の野球界に必要とされる指導者の素質をサポーターの前で伝授した。

Icon 16442758 1382702521799890 1774501613 o 西村 真 | 2017/03/18

サッカー解説者・中西哲生氏がナビゲーターを務める『ALE14』。スポーツの新たな価値を提案する、日本発のスポーツ・カンファレンスだ。その#2が恵比寿アクトスクエアにて開催された。中西哲生氏はステージに上がり冒頭、古田氏は早くからスポーツの言語化に取り組んできた第一人者と紹介し、古田氏をステージ上に招いた。

前半のプレゼンテーマは「いい指導者になるには?」。

古田氏は野球が苦手な人でも指導者になるチャンスは十分にあると語る。「今日お話を聞けば皆さんは良い野球の指導者になれます。断言します!」。来場した大勢のサポーターは長年日本のプロ野球と古田氏の現役時代の活躍を知るが、古田氏は躊躇いなく、高らかに宣言してプレゼンはスタートした。

“フルタ式”野球の良き指導者になる上で、重要なポイントを3つ挙げる。
1.構え
2.脇
3.ハの字
これらのメリットとデメリットを理解しないと駄目だという。人を指導する上で、打ち方や構えについて様々な選択肢がある中で、選手の目標や特徴に合わせて正しい選択肢を与えてあげる必要があるからだ。

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※中村紀洋の野球モノマネを披露する古田氏。他にも、王貞治氏の”1本足打法”や松井秀喜氏、イチローらのモノマネも披露して、会場を沸かせた。

古田氏は言う。例えば、選手の打ち方や構えには様々な個性がある。イチロー選手はコンタクト重視の打撃スタイル。侍ジャパンの松田選手はバットを”寝かせて”打つ。メジャーでは散見できるものの、日本では珍しいタイプだ。高めのボールが苦手な人は寝かせて打った方が良い。このように誰かに対して指導する時、具体的に「何が足りないのか」、「その打ち方ではどんなメリットが享受でき、逆にどんなデメリットが起こり得るのか」をきちんと指導者として説明できないと説得力に欠けるという。言語化できることで、「細かいところまでみてくれているな!」と納得してもらえ、良い指導者になる為の近道になる。

一本足打法も同様だ。「世界の王さんがそう打つのだから間違いない」と信じて込んでしまっている人は多い。どんな打ち方にも必ずメリットとデメリットが存在する。

他にも一般的に、「両脇を締めなさい。どうせ後で絞るのだから最初から締めて打て!」が日本。対して、アメリカではとにかく強く打ちたいという考えがあるから、強打する為に最初は脇を空けて打つ。どちらが良くて悪いのかではなく、長打やHRを志向するメジャーとは根本的な発想から異なるのだ。

古田氏は、どんな選手を目指すのか、どんな打ち方が自分に合うのかによって正しい選択肢を選ぶ必要があるという。そして、多少変わっていても「世界に通用する個性的な選手を排出したい」と抱負を語ってくれた。

良き指導者になり、世界に通用する選手を排出するには?例えば、古田氏のように現役時代のキャッチャーの場合。キャッチャーにおいて、大事な仕事は、どんなワンバウンドきても毎回しっかり返すこと、盗塁を刺すこと、打つこと、その他にもリード(配給)やコミュニケーション能力も大切だ。ピッチャーと監督の間に入り、どうチームとしてうまくやっていくのか、いわば「中間管理職的」な仕事だと説明する。

では、最も重要なことは何か?古田氏は会場に問いかける。あえて言うなら「0.1秒短縮できたら1億円」と、大変キャッチーなフレーズが飛び出して会場の視線を集めた。

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盗塁を刺せるようになったら、はっきり言って問題はない。良いキャッチャーで、ピッチャーも信頼してくれる。「人間性に多少問題があっても大丈夫!」とまた会場の笑いを誘う古田氏。

プロ野球において、捕手から二塁への送球時間は約2秒前後と言われる。古田氏は現役時代、1.8秒程度だった。0.1秒縮めることはもちろん簡単ではないが、この時間を短縮できないとプロを続けていく上で将来性がないのだと古田氏は説明する。その理由を解説してくれた。

0.1秒縮めるだけで、レギュラーがとれるようになる。2―3年日本のプロ野球でレギュラーをとれば1億円プレイヤーになれる。だからもっと真剣にこの0.1秒縮めることを努力すべきだと主張する。では、どうすればそのタイムは縮まるのか?

正解は、「正確に投げること」にある。どんな投げ方しても良いから投げる先、ボールは受け手の下に投げないと駄目。サイドスローでも、どんな投げ方でも構わないが、送球が上方向になっていたら意味がなく、タイムは短縮できない。それが古田氏の「0.1秒短縮できたら1億円」とする所以だ。

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※対談形式で、サポーターから寄せられた様々な質問に回答する中西氏と古田氏。

プレゼン終了後、古田氏と中西氏による対談形式に移行した。来場者のサポーターからリアルタイムに質問を受け付け、二人が回答していくインタラクティブなセッションだ。ここでは印象的だったQ&Aを一部要約して紹介したい。

Q. 野球経験がなくても良い指導者になれるか?
A. できると思う。野球の知識がしっかりしていて、説明できて、説得力があればできるし、指導者になれる。野球の理論がしっかりしていることが前提。
中西氏も同意で、サッカーの世界でも例えばモウリーニョ氏も元通訳からキャリアを移したと紹介した。

Q. 新ルールについての質問。投球せずに、敬遠OKとする新ルールについてどう思うか?
A. 賛成。試合の時間も短縮でき、ルールを尊重することは大事だが、あまりナンセンスなことに費やすのはどうかなと思うので、この新ルールには賛成である。

Q. WBC公式球についてどう思うか?
A. 滑る。日本のボールは良い革を使うので滑らない。海外はあまり良い革を使っていなくてサラっとしている。ダルビッシュ選手も前田健太選手らも最初は適応に苦戦したが、1年経って慣れていった。また、風の影響を受けやすい。

途中、中西氏からWBCでは「誰がキーマンになるか?」という質問が飛び出した。古田氏は「ロッテ西川、則本。彼らの出来次第でしょうね」と回答した。合わせて「やっぱり韓国には勝って決勝にあがって欲しい」とWBC日本代表にエールを送り、自身が決勝戦の解説を務める予定であることを告知した。

Q. 監督をもう1回やる可能性は?
A. わからない。チャンスがあれば。僕ね、結構野球得意なんですよ(笑)

対談形式終了後、最後に中西氏は「お互いにスポーツ界のコンテンツを盛り上げていければと思っておりますので、今日は本当にありがとうございました!」と笑顔で締めくくり、次回以降の開催にも目が離せない。

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次回以降の開催について
4月24日(月)プレゼンター近日発表予定
4月27日(木)平野早矢香(2012年ロンドン五輪・卓球女子団体銀メダル)

■ALE14公式HP:http://ale14.com/



取材協力/株式会社タイズブリック
写真/阿久津知宏、西村 真
取材・文・画像編集/西村 真