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DDTプロレスの“最後の砦”竹下幸之介。他団体に流失したベルト奪還に向け、ZERO1・田中将斗と一騎打ちへ(前編)【3・20 後楽園ホール】

「文化系プロレス」として、プロレスの概念を吹き飛ばす発想でファンを魅了し続ける団体「DDTプロレスリング」。昨年末、DDTではシングルマッチのリーグ戦「D王 GRAND PRIX」が行われ、ZERO1の田中将斗が優勝。続く1月26日の後楽園ホールではHARASHIMAを破り、DDT最高峰のベルトKO-D無差別級王座を獲得した。2月23日にはMAOが田中に挑んだが、善戦むなしく敗退。DDTの“最後の砦”として、3月20日の後楽園ホール、竹下幸之介がベルト奪還に臨む。その戦いを直前に控えた今、DDTの竹下幸之介に話を伺った。

Icon 70090528 511982836063813 5722354386395463680 n 大楽聡詞 | 2020/03/17
――竹下選手がプロレスに興味を持ったきっかけを教えてください。
 
竹下:プロレスが好きになったのは僕が3〜4歳の頃。実家が焼き鳥屋を経営していまして、お店終わりで両親が定食屋にご飯を食べに行った時に、ちょうど深夜2時くらいで「ワールドプロレスリング」が放送していて。その影響でプロレスを見始めました。
 
当時、僕は仮面ライダーやウルトラマンが好きだったのですが、親父が「アントニオ猪木という人の方が強いんだぞ」と大阪人特有の冗談を話していまして(笑)。だったら、一番強い人がいるプロレス以外は見る必要がないな、と。周りの幼稚園児が仮面ライダーやウルトラマンに興味を持っていたなか、僕はプロレスに熱中していたんです。

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――お父さんの英才教育にハマったんですね。その時、記憶に残っている選手はいますか。
 
竹下:猪木さんからプロレスに入って、特にゾッコンになったのはグレートムタです。おじさんたちが闘うなか、一人化け物が闘っていたので(笑)。加えて獣神サンダー・ライガーですね。子供の頃の僕には、マスクマンという概念がなかったものですから。
 

当時はレンタルビデオしかプロレスを観る手段がなかったので、お店で貸し出ししている「新日本プロレス」と「みちのくプロレス」のビデオは一通り見ましたね。
 
その後、大仁田厚さんが立ち上げた「FMW」のデスマッチを見るようになりました。電流爆破が、子供ながらに面白かったんですよ。
 
――子供の時に電流爆破を面白いと感じたのですか!?
 
竹下:仮面ライダーでも爆破シーンがありましたよね。電流爆破を、それと同じ感覚で見ていたんです(笑)。だから子供の頃は、スタントマンとかレスラーとか、自分の中で区別はありませんでした。

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――ストロングスタイルの新日本プロレスから、ルチャをベースにしたみちのくプロレス、そして電流爆破のFMWと、振れ幅がすごいですね。
 
竹下:時代ですよね。特にFMWに関しては、親にビデオを毎週2本ずつ借りてもらっていたら、近所の3店舗のレンタルビデオ屋を全て制覇してしまったんですよ(笑)。
 
すると、親が「継続的にビデオを借りると料金が馬鹿にならない」と言うので、小学校2年生の誕生日プレゼントに、有料チャンネルの「サムライTV」に加入してくれました。そこでハマったのが世界最大のプロレス団体「WWE」です。とにかく「スゲェー!」と感動しましたね(笑)。それまでは、ビデオで過去の試合を見ていたけど、サムライTVで毎週、新たに展開するストーリーを追える楽しさを知りました。
 
そこからアメリカのプロレスを観るようになり、全世界のプロレスが好きになったので、DDTの高木社長にモバゲーで履歴書を送ったんです。
 
――そうだったんですね(笑)。そんな様々の試合を観ていく中で、特に印象に残った試合は何ですか?
 
竹下:グレートムタの試合は全て観ていましたから、vsアントニオ猪木とか、vsライガー、vs木戸修、vs馳浩戦とか、衝撃的でしたよね。最短距離で勝たない、というのがプロレスの魅力の一つなので、子供ながらに「何なんだろう?この魅力は…」と思って見ていました。

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――武藤敬司さんは、時代によってファイトスタイルを変えていますが、その中で一番好きなのがグレートムタですか。
 
竹下:グレートムタは見た目のインパクトがありますからね。僕は武藤敬司マニアで、DVD BOXも持っているくらいファンなんですけど、特に好きなのはオレンジパンツ時代ですかね。90年代、UWFインターと闘う頃の武藤さんが好きです。
 
――ではやはり、武藤さんの動きや技は参考にしているのでしょうか?
 
竹下:動きは参考にしてないです。ただ、武藤さんの自伝とかを読んで、やっぱり人と同じことをしない、とか、自分のやりたいことをやる、という考え方は参考にしていますね。僕自身、自伝を読むのが好きなので、レスラーの自伝は一通り読んで学んでいます。自己啓発本的な感覚で読みますね(笑)。
 
――プロレスラーの中で一番影響を受けているのが、武藤さんだと。
 
竹下:そうですね。でも影響を受けているという意味では、全日本プロレスの秋山準さんも、かなり影響を受けました。2試合しか絡んでないんですけど、プロレスの戦い方というか考え方というか、「プロレスとは、こうだ!」というのを、ほんの10分のタッグマッチを通して教えてくれたんです。これは直接、肌と肌を合わせないと分からないですね。
 
僕はレジェンドと言われている人と何度も戦わせて頂きましたけど、秋山さんの衝撃度は、レスラー人生で一番大きかったです。

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――今、お話にもあったように、竹下選手は数々の選手と戦っていますよね。秋山選手以外で印象に残っている選手はいますか。
 
竹下:新日の棚橋弘至さんですね。2014年8月、デビュー間もない時期に戦いましたけど、何にもやらせて貰えなかったです。僕は自分の試合は良く観るんですけど、唯一、一度も見返してない試合です。本当に何にも出来なかったので(笑)。
 
――それほど悔しい試合だったのですね。超ヘビー級で195cm、140kgの石川修司選手との戦いはいかがでしたか?
 
竹下:僕が当時90kgなので、石川さんの体重は1,5倍くらい重いんですよ。ただ、その頃ウエイトトレーニングを本格的にしていたので、重さに対する戦いづらさはなかったですね。ぶつかり合った時の衝撃で、戦った後にボロボロになりましたが(笑)。
 
というのも、お互い体が大きくて、スピードもあるので、ぶつかった時はダメージが大きいんです。石川さんは体の大きさに加えて頑丈さも兼ね備えていますから、ラリアートを打った僕の方が、ちょっと肩が外れるということもあるくらい(笑)。
 
――それは、かなり衝撃が凄かったんですね。逆に戦いづらい選手はいますか?
 
竹下:若手の頃は、男色ディーノさんとの試合はやりづらかったです。当時はプロレスに対して柔軟ではなく、「俺のプロレスはこうだ」という思い込みがあり、試合を成立させようとは思っていませんでした。「勝っても負けても、僕のプロレス観がブレなければ良い」と思っていたんです。でも、今は大人になったので大丈夫です(笑)。

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――プロレスに対しての考え方が変わったのは、なぜでしょう?
 
竹下:一度、KO-D無差別級のチャンピオンになって、最多防衛記録を作っているとき、秋山さんや他の方々と戦って、一気に自分のプロレスに対する価値観や視野が広がったんです。相手に合わせるわけではないけど、相手の技を吸収した上で勝つ、というのが美学になりました。
 
――猪木さんの“風車の理論”ですね。「相手の力を最大限に引き出して、それ以上の力でそれを倒す」という。
 
竹下:デビューして3〜4年目は、相手の力を引き出さずに自分の力10を出していたのを、相手の力を受け切った上で自分の力を10を出す、ということの重要さを知りました。そのことに気付くまでは、レスラー人生でも一番もがいていましたね。試合が楽しくないわけではありませんが、当時はすでにプロレスの世界を知り尽くしたような気になって、正直、飽きていたんです。
 
そんなとき、両国国技館やさいたまスーパーアリーナのメインに立たせてもらえる機会があって、何人かの選手かと戦ったとき、今いる世界から、一気に“次の部屋”に入れたような感覚に陥ったんですよ。言葉で現すのは難しいですが、その部屋は、今まで自分がいた部屋より広く、壁がどこにあるのか分からないくらい大きくて。「自分は今、どこにいるんだろう」と。
 
それまでは6畳くらいの狭い部屋で、「これが大人の世界か」とプロレスの全てを分かった気になっていました。要するに、プロレスに関して、6畳の部屋に収まる程度の面白さしか理解できていなかったんです。でも友達の家に行ったら「めちゃくちゃ広いやん!」って(笑)。僕が知らないところには、もっとプロレスの魅力がたくさんあるんだなと、気付くことができたんです。
 
僕はリングの上で戦うレスラーであると同時に、ファン歴22年の大のプロレス好きでもあります。こんなことを言うとファンの方に失礼なのですが、プロレスには「触れないと分からない面白さ」がある。それを追い求めていくのが、今は本当に楽しいんです。(前編終わり)

後編は、こちらより http://king-gear.com/articles/1233 


取材・文/大楽聡詞
編集・写真/佐藤主祥

<インフォメーション>
王者田中将斗選手に、竹下幸之介選手が挑むKO-D無差別級選手権。この試合がメインイベントで行われるDDTプロレスリング「Judgement2020~DDT旗揚げ23周年記念大会~」は3月20日 、東京・水道橋にある「後楽園ホール」で行われます。
 
詳しくは、下記のDDTプロレスリング公式サイトをご覧ください。