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右代啓祐(十種競技アジア王者)が語る、十種競技の魅力vol.1「ゴール直後は辛過ぎるので、全選手が倒れ込みます」

オリンピック競技で最も過酷と呼ばれ、勝者が「キング・オブ・アスリート」と呼ばれる陸上の十種競技。これまでオリンピック(2012年ロンドン大会、2016年リオデジャネイロ大会)に2度出場し、昨年8月のアジア大会で見事2連覇を成し遂げた右代啓祐選手(33歳)。9月27日からカタール・ドーハで開催される世界陸上を前に、右代選手に過酷な十種競技の魅力について、熱く語っていただいた。

Icon aff20898 d2d2 431d 8b05 0f3c5e5ae91b 佐久間秀実 | 2019/09/14
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十種競技は、1人の選手が「走る・跳ぶ・投げる」全10種目を2日間に渡り競い合う陸上競技で、各種目の記録を点数化した合計得点により順位を決定する。   

1日目・・・100m走、走り幅跳び、砲丸投げ、走り高跳び、400m走
2日目・・・110mハードル、円盤投げ、棒高跳び、やり投げ、1500m走

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ーー十種競技は、まず1日目に「100m」から始まるんですね。 
右代:そうなります。オリンピックの場合、朝5時に起きて食事を摂ります。6時に選手村を出発して、7時過ぎから競技場でウォーミングアップを開始します。   

朝9時頃から100mがスタートします。全力でダッシュをするので、いきなり力を使ってしまいますね(笑)。開始前に、「失敗をできない。よし、やってやるぞ。ライバルが速そうだ」と、様々な感情が入り乱れた不安定な状態で挑みます。

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ーー次の種目が「走り幅跳び」となります。
右代:走り幅跳びは、踏み切り板を1mmでも足の指先が越えてしまうと失格となるので、細かい技術が必要となります。踏み切り板を見ながら走って跳ぶと良い跳躍はできないので、「ここに板がある」という感覚を持ち続けて足を合わせる能力が要求されます。

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ーー3種目目が「砲丸投げ」です。
 右代さんのパワーを活かせそうですね。
右代:ボーリングの1番重いボールの重さもある砲丸を投げます。動きながら砲丸を投げるのは難しいですが、得意な競技なのでワクワクしながら投げています。

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ーー投げた後に「走り高跳び」と、また跳ぶのですね。
右代:中学生の時に走り高跳びをやっていたので、落ち着いて入れます。100mのスピードや幅跳びのような跳躍は必要なく、体を上昇させる方法や感覚を頭の中で調整しながら臨みます。  

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ーー1日目の最終種目が「400m」。最後に走るのは、凄く辛そうです。

右代:エネルギーがなくなるギリギリまで走ります。物凄くきついので逃げ出したくなりますね(笑)。スピードは必要なく、周りの状況や通過タイムを見ながら走ります。スタートから飛ばし過ぎて後半で失速したり、逆に後半にスピードを上げられずに終わることもあるので、少しのミスが命取りとなります。ゴール直後は辛過ぎるので、全選手が倒れ込みます(笑)。

ーーそれは過酷ですね。翌日にも5種目があります。疲労は回復しますか?

右代: 1日目の競技は21時過ぎに終了します。疲れを回復させるためにトレーナーさんにマッサージをしてもらいますが、アドレナリンが放出されて体がポカポカしているので寝つけません。実際に眠り始めるのが1時で、翌日の朝5時には起きるので、4時間睡眠ですね(笑)。   

vol.2へ続く。  

取材写真/八木茂樹
提供写真/右代啓祐
取材協力/国士舘大学