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黒革の矜持 第2回 播戸竜二×パラメヒコ 「僕にとってパラメヒコは、奥さんみたいなもの」

クラブレベルで様々なタイトルを獲得し、日本代表でもプレーした播戸竜二のキャリアは、パラメヒコとともに歩んできたものである。大宮アルディージャで円熟のゴールハントぶりを見せるストライカーが、パラメヒコへの思いを語るインタビューの第2回。

Icon s 1 戸塚 啓 | 2016/08/01
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<インタビュー第1回はこちら>

──播戸選手が履いているパラメヒコは、市販のものと変わらないですか?  


播戸竜二選手(以下、播戸 市販のものです。特別なオーダーをしているとか、足型を取っているとかいうことはありません。わざわざ足型を取って履くぐらいなら、そのスパイクを履かんほうがいいと思うんですよ。足型を取らないと履けないってことは、自分に合っていないってことだから。それやったら、自分に合うメーカーの、自分に合うスパイクを、履いたほうがいいと思うんです。  

──すごく納得できます。 
 
播戸 サッカー選手にとってスパイクは、大切な商売道具やから。そのスパイクが履きやすいのか、自分が気に入っているのかってことが、僕にとっては一番大事やから。  

──素敵なこだわりですね。  

播戸 モノとの付き合いかたには、その人のこだわりとか、どうやって生きていきたいのかが、出ると思うんですよ。同じものを長く愛するっていうのは、人となりの表われでしょう? 僕にとってパラメ(ヒコ)は、奥さんみたいなものですね。まだ結婚していないですから、奥さんの代わりです(笑)

──足のサイズは?

播戸 25センチです。僕はけっこうカカトが出ているんで、履き始めはマメができたりするんです。ケガからリハビリを経て久しぶりにスパイクを履きました、ってときなんかに。ってことは、パラメが合ってないんかなって……そんなわけないですよ! 僕の足がちょっと変わっているから、そうなっちゃうだけです。  

──練習と試合では、スパイクを履き分けています? 

播戸 いちおう、分けてます。ただ、同じスパイクでも感覚が違うというズレが、パラメは圧倒的に少ない。他のスパイクだとそういうのがあるみたいですけど、それがホントに少ないから、試合用でも練習用でも履く感覚は一緒です。 スパイクよりもソックスが練習と試合で変わったりするので、そっちのほうに違いを感じちゃいますね。  

──1シーズンで使うスパイクの数は? 

播戸 1シーズンに何足使ったのか、きっちり数えたことはありません。でも、そんなに多くはないですよ。パラメは長持ちしますから。 練習では3足くらいを使いまわしていて、毎日同じものを履くと摩耗するので、一日、二日は空ける。3足のなかで一番長く履いているものは、雨が降ったときに使うとか。それがだんだん疲れてきたら、もう使わないでチャリティー用に取っておくとか。それでまた新しいものをひとつ入れて、また3足でローテーションしていくという感じです。    

──カズさんは1シーズンに6足くらい、だそうです。

播戸 カズさんは最近、新しいモデルを履いてますよね。
 
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──カラースパイクを履いていますね。 
 
播戸 けっこう派手なスパイクを、プーマが売りたいっていうスパイクを、カズさんは履いているじゃないですか? それが素晴らしいなあ、すごいなあって。カズさんぐらいまで突き抜けたら、ああなるんかなあって。オレもああなるぐらいまでやりたいなあって。  

──あれっ、何かいじわるそう顔をしていません?
 
播戸 僕はけっこう繊細なんで、アッパーの違いとかも気になるんです。カズさんはわりと、てん……いやいやっ、何でもないです(笑)

──続きを聞かせてほしいところですが、先に進めましょうか(笑)。播戸選手がスパイクに求める機能は? 最新のスパイクには、魅力的なキャッチフレーズのついたものがたくさんありますけれど。

播戸 新しいスパイクも、もちろんいいと思います。グリップ力があったりとか、軽かったりとか。いいんですけど、何かね、グリップがあって止まり過ぎることによる身体への弊害とか、そういうこともあるんですよ。 
 
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──スパイクの機能で強引に身体の動きを止めたら、確かに身体に負担がかかりそうですね。  

播戸
 30歳くらいのときだったかな、プーマのスパイクを治してくれたりしている方と話をしたときに、パラメの丸いポイントは、身体の負担が一番無いですよと。しかも、ポイントがあまり高くないのがいいんです、って。ポイントが高いとそのぶん負担もかかるから、30歳を超えてからはこれぐらいが一番身体にいいですよって、その方に言われて。 確かにそうやなあっ、て。そんなに大きなケガもしたことないのは、スパイクに助けられているのもあると思うんです。 イマドキの新しいものはだいたいポイントがタテで、あれ、あんまり滑らないんですよ。グリップ力はあるけど刺さり過ぎるから、膝とか中足骨をやっちゃったりする。全部がスパイクのせいじゃないですけど。
 
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──またしても、納得です。  

播戸
 パラメは滑るところでは滑る、危ないところでうまく足が抜けるから、ケガをしにくいっていうのが僕の感覚ですね。 じゃあ、グリップ力がないんかっていったら、別にそこで勝負せんでもいい。このポイントでもうまくやれるように、身体を使ったりすればいい、というのが僕の考えです。  

──さらにさらに、納得です。

播戸 基本的に僕は、スパイクを気にしたくない。無頓着なわけじゃなくて、こだわっているがゆえに、気にしたくないって言うのかな。そこに自然とあるもの、裸足の感覚みたいなほうが、いちいち気にしなくていいじゃないですか。グリップ力とかも、これがノーマルだと思えばいい。これが普通だと思っていれば、何も気にならないですよ。 (第3回に続く)                      

取材協力:大宮アルディージャ
取材:戸塚啓   写真:清水知良、(C)N.O.A

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